ICUシンドローム

ICUシンドローム

ストレスと痛みで動物は死亡する?

動物達は皆様の家族の一員として、毎日深い愛情に包まれた環境で生活をしております。

アニマルメディカルセンターも、24時間完全看護で音楽を流すなど環境作りの努力と、スタッフも優しいケアーに心がけております。残念ながら動物達にとっては見知らぬ環境や人の中、ご自宅と比べるとストレスがかかるのは避けられないのが現状です。また痛みに対してもペインコントロールを積極的に行なっておりますが、完全に取り除く事は不可能です。

そこには多くの問題がかかわっている事がわかってきました。つまりICUシンドロームです。

長期入院による精神的ダメージ

まず人医療において発表されました。初期には頑張って辛い治療を受け、早く元気になろうという意欲が存在しておりますが、入院が長引くと(5日以上)精神的なダメージが起こり、免疫力も下がり前向きさが失われ、最終的により良い治療効果が出てこないという事がわかりました。獣医医療においても1999年にアメリカの救急疾患の専門医 Dr.Kirby 達の研究で動物にも同様のことが起こるメカニズムが発表されました。

まず精神的なストレスと痛みによって、カテコラミン、コルチゾール、抗利尿ホルモンの上昇が起こります。これらのホルモンはストレスや痛みを受けた時に上昇するホルモンで、身体の全ての臓器の機能の低下を引き起こし、更に免疫力の低下をも引き起こします。

具体的には、消化管の動きが悪くなり、腸内の細菌が全身に回り敗血症を引き起こしたり、心臓が悪い場合は、ナトリウムや水分の保持力が上がってしまい、肺の中に水を貯めこんで肺水腫となり致死的な状況になることさえあります。

また、心臓の働きが低下する事で細胞内への酸素運搬力が落ち、全身での酸素不足が見られてしまいます。これらの理由で治癒力の低下や、場合によっては重篤な状態となり動物は死亡する事も発表されております。つまりストレスと痛みによって死亡する事があるということです。

早期退院・自宅ケアによる治療効果

当院でも手術後や重篤な病気の治療においては早期に退院させ、ご自宅でのケア―をおねがいするという治療方針に変更致しました。結果、動物はリラックスをし、痛みの軽減や環境のストレスから解放されるようになり、早期に食事を受け入れるなど、素晴らしい治療効果を実感しております。

<酸素吸入・点滴をしながら自宅治療に切り替えて落ち着いた犬と飼い主様>

以上の理由から、飼い主様にはご面倒なケアーをお願い致しますが、状態が安定した段階で早期の退院を推奨しております。なお飼い主様の不安を解消するために、退院後のご相談などは24時間体制でお受けしておりますし、勿論夜間には救急医療センターでの受診も可能です。(クラブVCJの会員様は診察料も無料としております)

どうぞ大切な家族のために、ご理解ご協力をお願い申し上げます。

病院長